








第2章

笑う悟り、遊ぶ仏
妙聖師(みょうしょうし)の素顔
1 救いの光 ― 霊的回向との出会い
先に述べたように、
僕は理由の分からない心身の重苦しさに長く苦しんでいた。
ついに十八歳のとき、それはピークに達した。
人生はズタボロだった。
死ぬ以外に救いはない、と思っていた。
何ひとつ希望はなく、世界は灰色だった。
――そんな僕を救ってくれたのが、霊的スキルの会得だった。
諸霊を救い、魔を浄化する「霊的*回向(えこう)」のメソッドだ。
それを真剣に行じて三年後、僕は圧倒的な宗教体験を得た。
後述する四種の「悟りの体感」。
それらはすべて、この時の体験がもとになっている。
あの体感をもとに、僕は氣が見えるようになった。
経絡診断ができるようになり、タオ指圧という体系を築くことができた。
*回向(えこう)って、仏さまや神さまの光をふり向けることを言うんだよ。

2 霊的回向の法を見出した人
霊的回向(えこう)は、僕を闇の底から救い上げ、
悟りの体感をもたらした修行だった。
その法を見出したのは、
恐らく誰にも知られていない桁外れの人物。
それが「妙聖師(みょうしょうし)」である。
僕は直接、妙聖師に会ったことはない。
にも関わらず、
僕の人生に最も深い影響を与えたのは、
間違いなく妙聖師だ。
霊的・法界回向の教えを行じることで、
人生が根底から変わった、ということもある。
でもそれ以上に、
いろいろな人たちから聞いた妙聖師の人物像が、何とも傑作だったのだ。
それはユニークで温かく、愛嬌があった。
そして、不思議な魅力に溢れていた。
僕はそこに「理想の宗教者」の姿を見た。
“こんな人になりたい”とすら、おぼろげに思った。
僕がかつての弟子たちから聞いた、
妙聖師(大<おお>先生と呼ばれていた)の姿を紹介したい。
3 豪快で、自由で、そしてチャーミング
「大(おお)先生(妙聖師)はね、ゲームが大好きでねぇ。
双六(すごろく)、花札、将棋――何でも夢中。弱いんだけどね〜。
チラッとゲームを見せるだけで、パッと顔色が変わるの。
“遊ぼう!”ってすぐ言い出して、みんなでワイワイ盛り上がってたわ。
あんたの作ったゲーム(ニンジャホープ)なんか見せたら、
そりゃあ大喜びだったでしょうねぇ……」(Aさん)
「大先生はね、堅苦しいのが大っ嫌いだったのよ。
修行なんて、もともとやりたくなかったんだって。
でもお兄さんの命令で、光明会の別時念仏に出されたの。
いつも眠っては、ひっくり返ってたのよ〜。」(Bさん)
※光明会とは、現代の釈尊と呼ばれた明治の大徳、「弁栄聖者」が創設した修行のサンガ。
その別時念仏は、早朝から一日十二から十六時間に及ぶ厳しい修行である。
妙聖師の兄は、弁栄上人の主治医を務め、自ら修行道場を建てるほどの熱心な行者だった。
「それからね、大先生はプロレスが大好きだったの。
うなりながら観てるんだけど、
大先生を観てる方が面白いくらい。
手足を動かして、レスラーの動きを真似しながら観てるのよ。」(Cさん)
「毎晩、法界回向のお勤め(1時間半〜2時間)は欠かさなかったけど、
金曜日だけは休み。
なぜって? その日はプロレス中継があったからさ!」(Dさん)
4 放浪と破天荒、そして大らかさ
「朝鮮だったか、大陸だったか……
どこかで金山を当てて、えらい羽振りで帰ってきたそうよ。
でもそれを散財して、すっからかんになっちゃったんだって。」(Eさん)
「“いやぁ〜、カスピ海の女性が一番だぜ!” なんてね、
放蕩話をしてくれるのが面白くてさ。
大先生と一緒にいるのは、本当に愉快だったよ。」(Fさん)
――そして、誰もが口をそろえて言ったのは、
そのぬくもりの温かさだった。
「どんな人が来ても、にっこり笑ってね。
人をふわっと包み込むように温かかった。
まるで春の陽だまりみたいでね。
一緒にいるだけで、安心したんだよ。」(Gさん)
5 自由と慈悲から開けた法門
僕が道場に通い始めたのは、
妙聖師が遷化されてから十年ほど経った頃だった。
それでも、多くの弟子たちは――
まるで忘れられない恋人のことを語るように、
師の思い出を話してくれた。
霊的回向の法門を立てる以前の妙聖師は、
「生気自強療法」と呼ばれる“氣”の治療師をしていたという。
氣を入れると、
患者の身体が自然に動き出し、
病が癒える――
そんな不思議な療法だった。
実際に道場でも、
生気療法を受けて無意識に身体が動き出す人々がいたという。
「修行なんか嫌いで、眠ってばかりいた人が、
どうして法門を立てるまでになったのか……
ほんと、人生はわからないもんだねぇ。」(Hさん)
僕は思う。
霊的・法界回向の法門は、
厳格な修行の果てに生まれたものではなかった。
人間的な自由さと、
すべてを包む無限の慈悲から、
自然に花開いたものだったのだ。




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